MINI ALBUM「MICHITONOSOGU」オフィシャルインタビュー


THC
2016年リリースの「VIBRATION」でマンハッタン・レコードに移籍したTOKYO HEALTH CLUBが、新作となるミニ・アルバム「MICHITONOSOGU」を完成させた。これまで良くも悪くも「ユルい」や「サブカル」といった評価を受けがちだった彼らだが、そういった文系的なキャッチーさや、多面的な存在性は残しつつも、今作ではより「ヒップホップ性」を作品の中心に据え、彼らが本来目指していたアプローチを形にする。その意味では、ヒップホップの自由度や、王道的なヒップホップをより深く取り込み、推し進めることで、いわゆるヒップホップ的なマッチョさという意味ではなく、芯の強い「タフ」な作品を完成させたTHC。新たな側面を見せる今作は、まさにリスナーにとって「未知との遭遇」となるだろう。
 
========前作「VIBRATION」から今作「MICHITONOSOGU」までの前後では、MACKA-CHINさんの「MARIRIN CAFÉ BLUE」にも収録された“ズラカル feat. TOKYO HEALTH CLUB”への客演や、男性ラップ・アイドル:MAGiC BOYZのシングル“3.141592”をプロデュースするなど、外への広がりも強くなりましたね。
JYAJIE「繋がりが増えていったし、それが結果、色んな仕事にも広がっていって」
DULLBOY「“東京Swingin’”は『WEGO』とのコラボ企画『WE GOOD TOKYO』のテーマ・ソングとして作った曲だったし、“supermarket”は『モヤモヤさまぁ~ず2』のED曲に起用して貰ったり」
TSUBAME「その意味でも『VIBRATION』を出してから、色んな人が見てくれるようになって、活動の幅が増えたと思いますね」

 
========「VIBRATION」も含めて、今までのTHCの作品は評される時に、ヒップホップとの距離感ーーそれは得てして「ゆるい」と言われがちだったけどーーや、アウトサイダー的な文脈で捉えられる事が多かったですね。だけど「MICHITONOSOGU」は、非常に真っ直ぐに、「ヒップホップとして格好いい事が出来る」という事実を提示した作品になっていて。
JYAJIE「そこをちゃんと狙って作ってみようかっていうのが、制作の原点にあったんですよね」

 
========「アウトサイダー」「ゆるい」と見られる事に対するフラストレーションはインタビューでも語られていたし、同時にそのイメージを「シティ・ポップ」的な提示として利用してる部分もあったと思います。だから、そういったイメージを抱いてる人には、今回のアルバムの構成を意外に思う人もいるだろうなって。
SIKK-Oシティ・ポップ感を前回は利用しようとしてたし、そう思われてもいいと思ってたけど、今回はそれを裏切らないといけないとも思ったんですよね」
JYAJIE「なんとなく、そういうシティ・ポップ感みたいなモノが流行りでもあるじゃないですか」
SIKK-O「それと同じことをやってもしょうがないし、『裏切らない裏切り』みたいなアプローチが今回は出来ればと思ったんですよね」

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========だから、これまでのTHCの音楽から全く方向転換した訳ではないし、延長線上にはあると思いました。ただ、今までも内包してたヒップホップ性みたいな部分に、パラメーターをかなり多く振ったというか。
JYAJIE「根本的なTHCらしさは変わってなくて、進め方の違いだけだと思いますね。でもそこに向かう為に、トラックやリリックを変化させる事は意識しましたね」
SIKK-O「トラックの違いが一番大きいよね」
TSUBAME「『VIBRATION』はラップを聴かせるためのトラックを意識したし、色んな人の意見を取り入れてあの形になったんですよね。だから正直、自分個人が好きなトラックというよりは、イメージにトラックを沿わせたり、『THCに求められるトラック』を作る作業でもあったから、『VIBRATION』のトラック制作は大変で。だけど今回は自分が単純に良いと思える、好きなタイプのトラックを前面に出したんですよね」

 
========質感的にもクリアさよりも、ざらつきだったり、ラフな部分を感じますね。
TSUBAME「わざとサンプルも荒く切ったり、あえてノイズを残したり、弾きも入れたけど、それをエンジニアのSUIさんに汚して貰ったりして、キレイに纏めてはいないですね。そういう空気感を出したかったし、その質感にアルバムのトーンやラップを合わせて欲しくて。それは、こういうトラックで作りたい、っていう気持ちと、そういう音像とラップでも、ちゃんとリスナーに届く品質になるだろうなっていう自信が持ててたからなんですよね」
SIKK-O「だから今回は改めて4人に立ち戻って作った作品ですね。4人での会議も増えたし、録音も宅録に戻したり。初期の制作の感触に近いんですよね」
JYAJIE「1stの『プレイ』や2nd『HEALTHY』でやりたかった事がようやく出来た感じもあるよね」
TSUBAME「うん。本来求めてたモノに自分たちの技術力が追いつけたと思うし、ようやくそれが出来たんだと思う」
SIKK-O「感覚的にも、いままでみたいな『オフザケ』は止めて」
TSUBAME「クール目に寄せようって」
SIKK-O「……なんでそうしようって話になったんだっけ?」

 
========一番重要でしょ、そこ(笑)。
DULLBOY「根本的には『VIBRATION』と同じようなものを作っても受け入れられないし、自分たちも面白くないよね、って」
SIKK-O「そうだそうだ。且つ、今回のベースになってるような90sヒップホップの質感がTSUBAMEのデモにあったから、ミニ・アルバムをその空気感で統一するのも可能だし、今までそういう作風もやってこなかったから、面白そうだよねって」
JYAJIE「それに、6曲だからちょうど良く収まったのかなって。12曲とかこのテイストだと、ちょっと難しいし、聴き疲れるかも知れないけど」

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========その意味でも、4人でチャレンジや実験してるような雰囲気も感じたし、それが出来るパッケージだったという事ですね。
JYAJIE「一曲目の“未知との遭遇”からしても『家感』っていうか、ガレージ・ヒップホップのような印象が僕らの中で強くて。遊びつつ、でも割と渋く作れたと思うし、この曲を作った事で、アルバムの全体像が見えた感じですね」
SIKK-O「全体の匂いが決まった感じだよね」

 
========ドラムとベース・ループを軸に引っ張っていって、そこにカラフルに上モノが乗かっていく感じも、90sっぽい質感があって。
JYAJIE「フックもJurassic 5っぽい、ユニゾンで引っ張っていく感じにしたくて。そこはかなり練習しましたね」
SIKK-O「この曲みたいな、ユニゾンで揃えるようなメロ・フックは今まで無かったし」
DULLBOY「このアルバムのどこが良かったって話をした時に、フックが一番良かったっていう話になるぐらい、全体的に今回はフックにはこだわってるし、メンバーも気に入ってますね」

 
========その意味でも、トラックの質感は硬質になってるけど、THC的なポップさや柔らかさもそこにちゃんとあるのが印象的で。リリックとしてもこの曲は全員、見せ場を作ってて、SIKK-Oくんの「泣くまで待とうが聴かす音飛び」は、リリックの構造と聴かせの塩梅がスゴく上手いし、DULLBOYくんの「結論言うとおれらは109 あなたの新たな煩悩さ」っていう部分はすごく独特なボースティングで、JYAJIEくんの「流星」から「三代目ならば志ん朝」って流れる部分はスゴく粋なリリックの流れになってて。
SIKK-O「ユーモアみたいな部分も、今まではひけらかし過ぎてたと思うから、今回は忍ばせ方を覚えた感じはあるかなって。面白いことを格好良く、スマートに言いたいって思ったのかも知れない」

 
========とは言え、アルバムの入り口が「お目にかかりたい/鍵かかった胸にかかるG」という非常にボンクラなリリックで始まってるのも、しょうがねえな、と(笑)。
TSUBAME「JYAJIEは胸ネタが多いよね。“東京Swingin’”の『あの子のBust No Gravity』とか(笑)」
SIKK-O「巨乳好きが出ちゃってるね」
JYAJIE「いやいや、デカい小さい関係なく、おっぱいは好きなんで」

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========振っといてなんだけどどうでもいいわ(笑)。“TAXI”はメンバー3人がそれぞれ別の女性キャラクターを演じてるのも面白いですね。
SIKK-O「タクシーを題材にした曲が作りたいっていう前提があって、その上でDULLBOYが『乗客が俺らのライヴを見に来るっていうイメージにしたらいいんじゃない?』って。明確なストーリーテリングは今までやってなかったし、しかもそれを女性の目線で書いてみるのも、新しい方向性に進んでるこのアルバムに相応しいと思ったんですよね。だけど、最初に話合わないで作ったら、みんなやさぐれたOLみたいになっちゃって(笑)」
TSUBAME「女性のイメージ作りがヘタだったという(笑)」
SIKK-O「経験値が少ないんで(笑)。それで一人一人、どういう生活をしてる女の人なのか、みたいなことをちゃんと話し合って決めて、そのキャラクターになりきって構成していったんですよね」
DULLBOY「『女の子のことをあんまり分かってないのに、こういう内容を書くのってウケない?』っていう『なんちゃって』な部分もあるよね。MVをもし作ったら、僕らが女装して出てくるパターンとかも出来そうだし(笑)」

 
========THCのリリックは観念的ではなくて、イメージの浮かびやすい、状況を描くようなビジュアル的な側面がありますが、この曲はそれをもっと推し進めた内容になってると思います。そして、そのそれぞれの物語が、最後はTHCのライヴ会場に収斂するっていう群像劇的な構造がスゴく良く出来てるなと。
SIKK-O「DULLBOYがそこは纏めてくれて。というか、この曲になったらいきなりDULLBOYが仕切り始めて、誰よりリリックをちゃんと考え始めて。いつもは遅れてきた上にリリック書いてないようなやつなのに(笑)」
JYAJIE「来なかった時すらあったのに(笑)」
DULLBOY「責任感出たよね」
SIKK-O「美味しいところを持ってったという気もするけど(笑)」
JYAJIE「“CITY GIRL 2015”とは違う街の書き方もしてみたかったんですよね。アルバムでこれが一番最後に出来た曲だったよね。トラックも最後に上がって来て」
TSUBAME「色々出したんだけど、DULLBOYにボツにされたトラックもありつつ。オーダーがいつもキツイんですよね。『これは売れるみたいなの上げてこい』とか、『安心するトラック混ぜといて』とか。一番リリック書くのは遅いくせに!(笑)」
DULLBOY「でも、色々ボツにした挙句に出てきたトラックが最高だったから、メッチャいいじゃん!良い曲になるじゃん!って思ったよ」

 
========俺のおかげだ感が(笑)。“東京Swingin’ ”はWEGOとTHCがコラボした企画「WE GOOD TOKYO」にも使われましたね。
SIKK-O「そのプロジェクトに向けて作った曲を、アルバム用に作り直した感じですね。アルバムとしても、あまり街とか東京みたいな事は言ってないので、この曲がその部分を補完してると思います」

 
========フックで「無いものが無い 東京City あるものばかり 東京City 」と言ってるけど、それが希望に溢れたキラキラした感じというよりは、ややペーソスも感じるような雰囲気もあって、必ずしも「買い物バンザイ!」みたいな感じではないのも、THCっぽいのかなって。
SIKK-O「ただただ明るいようなモノは面白くないし、明るいモノには暗いモノも少し込めたいというか」
TSUBAME「毒入れちゃいましたね」
SIKK-O「素直に明るいものはやっぱり出来ないんですよ」
JYAJIE「根がひねくれ者なのか」
DULLBOY「恥ずかしいっていうものあるかな」
TSUBAME「欲しいものがあった時に『欲しいぜ!』って言いたい?」
SIKK-O「ちょっと難しいというか、恥ずかしいよね」
TSUBAME「うちのメンバーみたく、中くらいの裕福さの中流階級で育つと、こうなるのかな(笑)」
JYAJIE「でも、その感情も僕らにとってはリアルなんですよね。『GET MONEY!』とか『成り上がり!』じゃない、フラットな気持ちっていうのも、僕らにとって普通だから」

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========ヒップホップらしいアルバムでありつつ、いわゆるマッチョな方向性ではないっていう感覚はこれまで通りなんだけど、一方で”Skit -キャトルミューティレーションPart.2-“では、「強い日本語ラップ」の象徴とも言えるキングギドラ“未確認飛行物体接近中”のヴァースを引用してて。だから、B-BOYスタンスとか、ヒップホップ的な強さを面白いと思いながらも、「それをそのままトレースしたりするのは自分たちのやることじゃないし、自分たちなりのヒップホップを表現したい」っていう、「ヒップホップ性」に対して相反する感情があるのが、THCの肝なのかなって。そこにDE LA SOULみたいなニュースクール的なモノを感じたりもして。そして“IT’S ALL RIGHT”はメロディ感であったり音感的な部分が強い曲ですね。
TSUBAME「フックのメロディはJYAJIEが考えたんですけど、そのアレンジと歌をkiki vivi lilyさんにお願いしたら、スゴく良いものが返ってきて」
JYAJIE「僕の入れてたラフが全然良くなくて、やべ~、大丈夫かな~と思ってたんだけど、kikiさんにやって貰ったらもう一気に完璧になって。20点が100点になった(笑)」
TSUBAME「kikiさんの才能で保ってるような曲ですよ(笑)」
SIKK-O「リリックもアルバムの中で一番苦戦したよね。どう固めていくかを手探りで作った感じで」
JYAJIE「まずテーマとリリックを噛み合わせるまでに時間がかかって」
SIKK-O「セルフ・ボーストにしたいっていうイメージはあって、トラックに勢いもあったから『さくっと作れそうだね』みたいな感じだったんだけど、いざ作り始めたらセルフ・ボーストに慣れてなさすぎで全然噛み合わなくて(笑)」

 
========「おれが通れば 道ばた花咲く」とか、ボースティングがみんな可愛らしくて、全然マッチョじゃない(笑)。
TSUBAME「ボースティングそのものが性に合ってない(笑)。びっくりするぐらい時間かかったし、『何言ってるか分かんないからもう一回考え直してきて』って常に言ってた曲でしたね」

 
========“supermarket”は、トラックの浮遊感はこれまでのTHCと近いイメージがあるけど、リリックは内省的だったり、自分の気持ちを書く部分があって。そういったパーソナルな部分は今までTHCは出してこなかったので、この曲も意外性を感じさせられました。
SIKK-O「ヒップホップのアルバムにしたかったから、そういった部分を出す必要があるなって。だから俺はこう生きていて、こう思ってるみたいな事も曲にしたほうが良いなと思ったんですよね」
JYAJIE「ちょっとこっ恥ずかしい部分もあるんですけど、あえてそれをラップにしてみて」
DULLBOY「ラップを通して言いたいことが出てきたんだとも思いますね」
SIKK-O「でも『俺はこう思うぜ!』じゃなくて、『俺はこう思ってるけど、そっちはどう?』っていうテンションですね」

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========パーソナリティを出すことで、メンバーの個人としての部分も見えやすくなったし、THC像が立体化した感じがありますね。
TSUBAME「THCはやっぱり閉じてる部分もあると思うし、それは打破したい部分でもあるんですよね」

 
========その上で、これからの作品についてイメージは浮かびましたか?
SIKK-O「次がどうなるって事は全く考えてないっすね」

 
========威張って言うな、という感じでだけど(笑)。
SIKK-O「必死なんですよ、『いま』に(笑)。やっぱり、これからのライヴが楽しみですね。曲数やバリエーションが実際に増えたと思うし、いろいろ新しい展開も見せられればなって」
TSUBAME「他人の反応や目線を消化したりーーこう言われてるけど、とかーーして新しいイメージが浮かぶ事も多いので、今回も反応を受けてからまた新しい事を考えられたらなって。作品としてはヒップホップらしさを目指したけど、同時にコミカルとかサブカル、緩め、みたいな、今までのTHCのイメージを望むような人のシーンにも、ちゃんと食い込めるようなポジショニングが出来ればいいなって」
SIKK-O「『THC、ホントに大好きです!』みたいな人が増えたりすると嬉しいですね。そんな人がいるんだ!?とも思うし(笑)」
JYAJIE「共感を求めるような曲を作ってないのに、それでも好きですって言って貰えるのは面白いよね。『お前もヤバイんだな……』って」
SIKK-O「『お前も根暗か……』って」

 
========リスナーと傷舐めあってどうすんだ(笑)。

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text & interview by 高木”JET”晋一郎
 
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アーティスト : TOKYO HEALTH CLUB (トーキョーヘルスクラブ)
タイトル : MICHITONOSOGU (ミチトノソウグウ) *6曲入ミニアルバム
発売日 : 2017年5月17日(水)
CD価格:1,500円+税 / デジタル:1,050円
品番:LEXCD17009

 
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